遠山敏之が斬る 繁盛店の視点

「肉ブーム」の陰にある見逃せない動き
2015/02/10

 いま「肉ブーム」が起きています。以前は、肉の専門家しか知らなかった「熟成肉」がテレビや新聞などの一般メディアで取り上げられるようになり、飲食店の新店ニュースリリースをチェックしていても、「肉バル」や「肉イタリアン」など、肉をキーワードにした店が目に見えて増えています。焼肉店はあいかわらず好調ですし、100g5.5円からの激安ステーキで行列ができた、ペッパーフードサービスの「いきなり!ステーキ」は、1号店からわずか1年で30店もの店舗展開を達成しました。実際、このコラムの2013年5月の記事でも指摘した通り、日本人の食肉消費量は年々増えています。

 食の洋風化が進むとともに、元気なシニアが増えていることがこうした「肉ブーム」の背景にありますが、実はその陰で、見逃せない動きが出ていることも確かです。

 その一つが肉の種類による嗜好の変化。グラフは、農林水産省が発表している食料需給表から作成した、日本人1人当たりの食肉供給量(ほぼ消費量と同じ)の推移ですが、長くトップを走っていた豚肉を、2012年に鶏肉が追い抜いています。2013年も概算値ながらこの傾向は変わっていません。そして、やや意外なことに、牛肉はこの10年あまりわずかずつ増えていますが、我々の実感ほどは大きな伸びを示していません。食料需給表は、外食や家庭内食だけでなく、加工用の食肉まで含めた総量を対象としているという要因はありますが、「肉ブーム」=牛肉人気、と考えることは、やや早計かもしれないのです。

 実際、世界に目を向けると、欧米では牛肉や羊肉など、肉の色が赤みを帯びている「レッドミート」は、消費量が頭打ちで、「ホワイトミート」と呼ばれる鶏肉などの需要が増えています(豚肉は、レッドミートだとする説とホワイトミートに分類する説と両方あります)。もちろん、このグラフはあくまでマクロの数値をベースにしたものですから、外食や家庭内食など、それぞれの局面にそのまま当てはめるのは乱暴ですが、なかなか気になるデータではあります。

 そして、その牛肉についても、面白いデータがあります。「ホットペッパーグルメリサーチセンター」が、牛肉の嗜好について、首都圏、関西圏、東海圏の9765人から回答を得たものです。調査時期が、2014年3月と少し古いのは、ご勘弁ください。

 この調査で、「脂が多めの方が好き」と答えた「脂身派」と、「脂が少なめ(赤身)の方が好き」と回答した「赤身派」の比率を見ると、全体では、脂身派が6割弱を占め、36%あまりの赤身派を大きく上回ったのですが、男性と女性を比べると、大きな違いがありました。男性は20代から60代まで、すべての年代で脂身派が6割以上になっていますが、女性は、20代、30代こそ脂身派が赤身派を15ポイント以上上回っていますが、40代以上になるとその差は10ポイント前後に低下し、50代だけで見ると脂身派47.8%に対して、赤身派が41.5%にまで迫っています。

 その理由を聞いてみると、トップは「体が受け付けなくなった」。そして次に「赤身の方がヘルシーだと思うから」が来ています。実際、レストランなどで女性がステーキを食べているシーンを見ていると、脂身だけ除いているケースは割と良く遭遇しますよね。

 そして、これに関連して、焼肉やステーキの味付けについて「タレ・ソース」か「塩」かのどちらが好みか聞いてみると、全体ではタレ・ソース派が5割強、塩派が3割強で、依然としてタレ・ソースの人気が高いのですが、20代から40代の女性は、塩派がぐっと増え、4割近い消費者が「塩が好き」と答えています。焼肉店やステーキレストランで、「この肉は塩で食べてみてください」とお薦めする例が増えてきたのは、90年代後半くらいからと記憶していますが、こうした食スタイルが女性中心にジワジワと浸透し始めているのかもしれません。

 WEBやSNSで毎日膨大な情報が流れ、食に関するものもかなり多くあります。僕らもそうした一次情報を参考にしていますが、たまにはこうした基礎的なデータを読み込み、大きなトレンドがどう動いているか、確認することは大切なことですよね。実際、過去にお会いした繁盛店の経営者って、現場主義の体育会系のようでいて、実はこうしたデータをきちんと押さえている人が意外に少なくありませんでした。まさしく「経営は夢とそろばん」なんですね。

2015/02/10